2017/01/09
いよいよ上洛
目次
上洛ーーつまり、都へ上る、ということですね。
周囲の心配
冒頭から上洛しないとワガママを言う昌幸。
信幸は以前から早く上洛した方が……と言い続けていますが、昌幸は終わりつつある戦国時代の流れを肌で感じることができず、自らの力で勝ち取ることに意義を見いだして納得がいかない様子。
信幸も新しい時代を感じているというよりも、性格的な面から上洛すべきだと考えている感じではありますが。
すると、周囲が昌幸を心配しはじめます。
直江兼継
盟友上杉家の重臣、直江兼継も心配してすぐにも上洛すべきと昌幸に説きます。
ここで「殿下は真田を直臣に迎えるおつもりだ」と言っているのが後々のポイントというか、今回の話の中で伏線の一つになっていますね。
「関白殿下を甘く見てはいけない」という言葉に「ふむ……」と思案してみる昌幸ではあるのですが……。
「大名か死か」という言葉で迫ります。
ほんと、大名にしてくれるっていうならそれでいいじゃん! って感じなんですけどね。(°ロ°;
直江兼継は信幸に、御館様(上杉景勝)が真田をよくしてくれるようにと殿下(秀吉)に取りなしていることを告げる。
昌幸に振り回されつつも、周囲は真田に優しい。
その辺の現実路線の窓口になる信幸。
母上様
昌幸の母親、つまり武田信玄のもとで攻め弾正の異名をとり大活躍した真田幸隆夫人はさすが肝が据わっており、昌幸に何を迷うことがあるのかと。
それにしても「一族を守るためには大名になるしかありません」という昌幸のセリフは、大名になれない大半の国衆などからしたら、オイオイオイ! と総ツッコミ間違い無しですね。
それにしても「死にものぐるいで戦ってきた果てに、武田家と縁もゆかりも無い者の家来になるというのは」というセリフがとても良いです。
生涯にわたって武田家、として信玄に対して忠節を近い続けた昌幸らしい物言い。
武田への想いを折に触れて差し込んでくる昌幸、間違い無く萌えキャラ。
「ウソでも良いから頭を下げ、牙を隠し、爪を隠し、従ったふりをして、秀吉の牽制に陰りがでたら寝首をかく。卑怯者で何が悪い」という母上の言葉は表裏比興の者、昌幸にとって最高の発破掛けになりますね。
家臣団
上洛する決意を伝えたところ、家臣団は残念がったり血気盛んなところを見せつつも、一番悔しいのは殿である、ということをよく理解して従います。
家臣団もまた、昌幸のことをよく判ってくれていますね。
先代幸隆の弟で、昌幸の叔父である矢沢頼綱は納得いかない様子でいやじゃいやじゃと出て行ってしまいますが、叔父上は以前からこういうところのある方ですね。
気持ちでは判ってるけど、頑固一徹な人もまた家中にはいるのよ、という。
姉上
昌幸が上洛するにあたっては、秀吉への拝謁がもちろん最重要ですが、真田一家にとっては長女松との再会も大変重要です。
当初は記憶喪失から、信繁らのことを疎ましく振る舞います。しかし視聴者は本物であることは匂い袋のことなどからもよく判ってますから、特にドキドキすることは無く見ていられますね。
それにしても松に関してはギャグ成分多め。踊りが上手い下手のくだりや、姉じゃなくて妹にの下り、そして足の裏カサカサなど。
松の記憶喪失は深刻に演出しても深まったりするようなことではないので、多少茶化していくくらいで丁度良いのかもしれませんが、三谷脚本が苦手な人はこういうところがダメなのかなあ、とも思うし、評価が分かれそうなところですね。
秀吉、太政大臣へ
「信長公もなれなかった太政大臣へ、わしはついにあのお方を越えたのじゃ」と大喜び(一応喜んでいる体)。
信長の場合、なれなかったというよりもならなかったとか、時間の問題だったとかいくらでも言い様はあると思いますが、秀吉が官位を他の武士より重視したのは確かなのでしょうね。
官位は権威ですから、農民出身の秀吉だからこそ特にこだわりが強かったのかもしれません。
家柄の確かな守護大名なんかだと、むしろ太政大臣になるなど考えもしなかったことかなとも思います。
と言いつつ、大して嬉しくないとテンションが↑から↓へ一気に移ります。
あくまで実をとっていく秀吉像というものを描いていますね。嬉しくないということも無かったとは思うのですが。
「天下平定がなれば天子様にお返しするつもりじゃ」は実際はどうかなーって感じですね。
昌幸、いよいよ上洛
昌幸が上洛することを秀吉から教えられる信繁。その際「はやく上洛しておればよかったものを」と過去形で語られちゃったりします。
一方昌幸と出浦は信長もそうだったから、と秀吉の天下もまたすぐひっくり返ると考えていますが、割と安定した世の中が来ることを知っている視聴者からすると、オーイ! それ読み間違いや! とツッコまざるをえず。
信繁、昌幸・信幸と再会
いよいよ上洛してきた昌幸と信幸。
信繁と喜びの中再会しますが、真田のおかれた状況は良いとは言えません。
大阪城を見ながら、お前ならどう攻める? と問う昌幸。
信繁はそれをよくよく考えたからこそ、生涯の最終版で大阪城を守ることになった時に、あの「真田丸」が生まれたのでしょう。
「城は大きければ攻めにくいというものではない。むしろ大きいと守りの手薄な場所が必ずできる。それを見つける」という昌幸は、秀吉に臣従することに関しては一旦諦めましたが、しっかり牙や爪を研いでいる姿を見せて、息子達を驚かせますね。
気を遣う信繁
殿下からの接待という体裁をとって、昌幸、信幸とともに太夫を呼んだ宴会を開きます。
それにしてもこのシーン、国もとのブスな(褒め言葉)な嫁さんからのシーンチェンジで美人な太夫に切り替わるというあからさまな演出。
実際には信繁が自腹を切って開いているのですが、大阪にきてこういったこともできるようになってて大人になったなあ、という場面ですね。
秀吉の恐ろしさ、器の大きさを説明する信繁に、信幸は「戦場で暴れ回る時代は終わるのか?」と問うと「父上の気持ちをお察しする」という信繁に「父上の話ではない」と信幸は言います。
「我らの話だ」と信幸。「生まれてくるのが遅かった」と伊達政宗のようなことを言いますが、これこそ信幸が単なる慎重覇であったり臆病なわけではなく、野心と甲斐性を持っている現れですね。
昌幸・信幸・信繁の三人の中で、立身出世という意味では信幸が最も成功者と言えるわけですし、生真面目なだけのお兄ちゃんではないという良いシーンだと思いました。
さすが、信濃の獅子です。
三成さんの正直検分
そして貢ぎ物の検分、有吉くんの正直さんぽ(関東地区放送)以上に正直な三成さんの正直検分になってますね。
見た目が悪い! 匂いが臭い! 散々な言われよう……。
一度凹むと凹み続ける父昌幸は覇気無く取り替えるよう言いますが、そうなると逆に熱くなる信幸。実はこの好対照タッグが車の両輪になってるんだなあ、と感じられます。
昌幸に続いて挨拶しようとする信幸の言葉を「時が惜しい」と遮って無視する三成ですが、実際にはこの二人、その後手紙のやり取りを数多くして仲が良かったようです。
明治時代になって初めて明かされた事実として、家康に拝領した短刀が入っていると思われていた箱の中からは、三成との書状など真田家にとって不利になるものが入っていたりして、危険を冒してまでそうしたものを家宝として代々のこした信幸の気骨が忍ばれると共に、三成との仲についてはあえてこのシーンでは他所他所しくさせて、今後良くなっていくという演出なのか、それとも本作においてはこの二人の友情は大して描くつもりがないのか、そのあたりはまだちょっと判らないです。
そして当日
謁見の間で秀吉をまつ真田ご一行様。
しかしそこに現れたのは名代の豊臣秀次。
秀吉は、真田の遅参に対して会ってやらないという仕打ちで応じます。
一応頭を下げる昌幸、納得のいかない様子を隠さない信幸。
慣れて無くて三成に助けを求める秀次。
淡々と話を進める三成。
秀次嫌いじゃないんだけどなー、不憫な男ですね。
「ないがしろにされた」を連発する信幸は「大名でも無いのに」を連発していたのに重ねてきてますが、今後もこういうやりとりはありそうですね。
縁側に据わってガックリと肩を落とす昌幸。
大谷吉継と真田昌幸
そんな絶望感ばかりの真田様御一行の元に、大谷吉継が現れます。
盟友石田三成には冷たい扱いを受けましたが、大谷吉継は真田安房守の評判に素直な敬意と親愛を表します。
後々娘を信繁に嫁がせる大谷吉継。
真田家との縁は大変深いですね。
恫喝しております
こういうことを言えるあたりが、信繁が秀吉に気に入られちゃう要素なのでしょうね。おもしろい、ってなって。
秀吉と昌幸
とうとう秀吉本人への拝謁がかなった昌幸。
焦らしておきながら、いざ姿を見せると献上品で三成に臭いといわれたクマの毛皮を着て現れたり、昌幸の元まで降りていってその手を取り、目を見て力を貸してくれと言ったり、秀吉の人垂らしの本領発揮ーー
と、思いきや。
飴を与えれば鞭も、と。
昌幸に天敵である徳川家康の与力になれと命じるあたりが、秀吉の一筋縄では無いところ、恐ろしいところ、ということですね。
帰国に際して家康のもとを訪れ挨拶し、頭を下げてこいと命令される。
家康は家康で、秀吉の味なはからいを喜ぶ。
やっぱり秀吉の掌の上にみんながいる構図ですね。
こんな世の中を、面白いという昌幸。
「武田が滅んでから」という言葉通り、昌幸にとって武田家滅亡の前と後とで、まったく違う世界を生きている想いなのでしょうね。
「わしはどこで間違った?」と弱気になる昌幸に「間違えてなどおりませぬ」と力強く言う信幸。
実際その通りだと思います。上洛していたらより待遇が良かった……? そうかもしれないですし、秀吉は気まぐれなところもありますから、必ずしもそうではなかったかもしれません。
息子たちが言うように、領地と領民を守り大名となった昌幸が間違えていたということは無いでしょう。悔しい気持ちも判らないではないですが。
松との再会
当初は再会、とは言えない状態。なにしろ記憶がないので。
そしてやはり松とのシーンはギャグ風味マシマシ。
ろくなエピソードが出てこないけど、家族ならではのエピソードという感じが出ていて嫌いではないです。足カサカサから記憶を取り戻すのがなんか唐突な感じでもありますが、これ以上ひっぱることでもないし、これ以上に良い描き方もないかな、とも思いつつ。
昌幸の言葉通り、悪いことの後には良いことがあり、バランスがとられるという感じ。
そういうことを伝えたいシーンなのは伝わってきます。
唐突な感じしちゃうけど(大事なことなので二回)。
記憶を取り戻し、これで名実共に「再会」と言えますね。
家康と昌幸
天敵家康に頭を下げる昌幸。
過去最大の高笑いをする家康。
秀吉の家来となった家康の、そのまた家来となってしまった昌幸。
家康の性悪さがとても出ていて良いシーンだと思います。
性悪さがとても出ていて(大事な事なので二回)。
信繁ときり
以前茶々に問われた際に「良い仲」と言ったきり。よほど嬉しかったのか、やたらご機嫌ですね。
信繁の口元についた餡を掬って食べたり、ギュッと手を握りしめたりして、親密演出が続きます。側室となるわけですが、着々と伏線を詰まれていってる感じです。
次回「恋路」
信繁ときりも進展するのでしょうが、茶々と秀吉を軸に、信幸と稲姫(小松姫)や竹林院なども登場するかもしれません。
恋がどうこうという話にスポットライトがあたるというのが、合戦の時代が一旦終わりを告げていくのを表している気がします。
小田原攻めで北条さんがぼっこぼこにされたり、政宗のスライディング土下座があったり、天下統一まではもう一歩ではありますけどね。
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本作の音楽、結構好きです。オープニング曲はそのドラマを端的に表現しますが、最後は悲願成就ならずに散っていく真田信繁、そして昌幸親子が迎える運命の不安さや、真田家が荒波に揉まれていく様子、それでいて力強く真っ直ぐである様が表現されていると思います。
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NHK 真田丸公式サイト