2017/01/09
前兆とは果たして何の……
本作は真田信繁が主人公なわけで、クライマックスは当然大阪の陣となるわけです。
それはつまり、豊臣家の滅亡でもあります。
前兆のサブタイトルは本筋のクライマックスの前兆でもあり、それはもちろん豊臣家滅亡の前兆……というわけでしょうね。
我が世の春
後陽成天皇の聚楽第行幸は歴史的な事件です。
天皇が臣下の邸宅を訪問するというのは、長い歴史の中でもそうそうあることではありません。豊臣性を賜り、関白太政大臣となった秀吉はまさに位人臣を極めたといえます。
徳川はその道を敢えて取らなかったといえばそれまでですが、平安以前からの伝統的な朝廷支配の枠組みで考えると徳川家は豊臣家に及ばなかったとも言えます。
裏で秀吉に毒づく家康のたぬきぶりは今回も健在ですね。
我が世の春を謳歌する秀吉に、側近の三成もギャグで喜ばせます。
尾張出身でもないのに「風呂にひゃーるかが良いと存じます」って、これだけでギャグになるんだから三成どんだけ普段固いんだよ! っていう。
すぐに照れてその場を後にするあたりが女性などからはカワイイなんて思われちゃうんでしょうね!
真田家の人々
松が上田に帰還を果たし、感動の再会を果たします。
こうの「またみんなで一緒に暮らせるのですね」というセリフを新妙な表情で見つめる信幸。
なにしろこれから離縁を切り出さなければならないわけで……。
そりゃあ伏し目がちにもなります。
なんだか頼りなくてよくわからないギャグ要員っぽいこのおこうという人物が、実は相当健気な女性だということが明らかになって人気もそれなりにちょっとずつ上がっているのではないかなあ、と想像。
もともと健気っぽいシーンはちょくちょく入っているのですが、どうにもコメディ色で上塗りされていって健気なのかギャグなのかよく分からないという感じになってましたね。
しかしここで「わしは断ろうと思っていたが源三郎がどうしてもと、な?」とか言っちゃう昌幸ひどいw
佐助は相変わらず登場退場時に風の効果音付き。
しかしおこうが侍女として残るという、こりゃあ信幸はやりづらいなんてもんじゃないね!
いずれ稲との火種にもなるのでしょうか? しかしおこうというキャラを考えるとぶつかりようもない気もするし、はてさて。
稲と忠勝
真田へ輿入れした稲。
忠勝の娘ではあるけれど、一度家康の養女となっているので、形式としては徳川家から真田家への嫁入り。
真田家にとっては形だけ見ればありがたい縁談ではあるのですが。
それにしてもお供に扮してついてくる忠勝の過保護ぶりは笑えるけど、婿としてはこれはウザいw
真田家に嫁いだ稲姫は後に小松姫となり、近世大名真田家の礎を築いた藩祖真田信之の正室として、徳川政権下での真田家の繁栄を支えた重要な役割を担う女性です。
このことが、信幸を中心とする上田・松代藩の繁栄の「予兆」であるとも言えますね。
女三人
関白秀吉の正室である寧。
側室である茶々。
徳川家康の寵姫である阿茶。
この三人がお茶飲みながら女の会話(イヤミの応酬)に興じている姿は怖いですね。
応酬といっても寧が他のふたりからイヤミで攻撃されるの図、という感じですが。
バカ食いをする茶々。
いかにも妊婦というフラグを立てまくり、やはりその通りに。
阿茶の寧への攻撃は寧の「生まれ」と「子を産んでない」という一番つかれたく無い二点を的確についてきていて、徳川勢は女も容赦ないな! といった風に。
世継ぎ
そしてお捨、後の秀頼を懐妊した茶々。
お捨は鶴松という名を与えられて……2歳で亡くなってしまうことに。
さてその辺の落胆と……いよいよ後の秀頼となるお拾の誕生とが今後描かれていくことになるとは思うのですが。
名探偵・信繁
三谷幸喜といえば古畑任三郎を思い浮かべる人は多いことでしょう。
しかしあのドラマは最初に犯人を明かした上で、犯人の視点でいかに逃げ切ろうとするかという部分も描いており、探偵と視聴者が視点や情報を共有する大多数の探偵モノとは全然違うものでした。
今回の信繁の探偵ぶりは視聴者と情報を共有しているモノだったので、古畑と同じではありませんが、なんとなくそう思わせるところが面白いです。
犯人は特定の人物ではなく「民意」とした三成はここでは官僚的発想よりも政治家的発想になってて良いですね。
それにしても死んだ尾藤に罪を被って貰おうという案を源二郎・三成・善継で話合っている際に三成の「殿下を欺こうというのか? 露見したら命はないぞ」という発言に「露見しなければ良いのです(ドヤ顔)」と応じた源二郎。
ここで全国でいったいどれだけの人が「お前、先週すぐにウソがばれて謝ってたやんけ!」とツッコんだことか。
血迷うたか佐吉!
乱心しているのは殿下です!
諫言を躊躇しない三成まじイケメン。
そして「わたしが出てこないとあんたも収まりようが無い」という寧様。さすがです。
秀吉のことを完全に理解した上で、秀吉が求める最良の救いの手をさしのべる。
だからなんですよね……秀吉は寧に甘えてしまう。結果、寧がないがしろされたように見えてしまう。けど、このないがしろにされているように感じるのは第三者(視聴者)だからであって、寧自信はそれを良しとしているのかもしれないので人の幸せや夫婦観みたいなものは判らないですね。
ダメンズというには秀吉はできすぎる男ですが、こと女関係に関してはダメンズと言えると思うのでそういうダメンズ好きの一人なのかもしれないですね、寧様……。
二代将軍秀忠に慕われていたようなので、良い余生を過ごすことができたのではないかと想像しておきます。
時代の描写
源二郎と平野が調査経過を三成へ報告しにいくと、三成は大谷吉継となにやら話しており、何ですかと問うと刀狩りについて教えてくれます。
本作ではこのような手法が多い。
例えば前話では清正を九州平定に向かわせるくだりも、大谷吉継と源二郎との会話の中で語られました。
よくあるパターンだと、ナレーションなどで
「この年秀吉は刀狩りを行い(略」
「いよいよ九州平定が目前となった頃、秀吉は加藤清正を九州へ派遣し(略」
などとして歴史的事実や大きなトピックを説明するのが多いです。
それは歴史を知っている視聴者へ向けたメタな情報提供なのですが、本作ではそういったことを信繁と視聴者の視点を共有させて会話の中で語られていくように意図しているようです。
逆に、信繁を中心とした真田家の動きなどは3Dの地図を表示して進軍の様子などを補完して提示していた気がします。
しかしあの地図による情報提供は割と序盤には頻繁だったのですが、ここ数話はまったく使われていないので、演出の方針が少しずつ変化していってるのかもしれませんね。
大阪城の良心 秀長様
秀吉の弟で、大和大納言と称される百万石の大名。
まさに豊臣政権のナンバー2であり、兄秀吉との仲も兄弟喧嘩のようなことはあっても決して殺し合いのような破綻を見せることが無い、大黒柱中の大黒柱。
そんな秀長が病の臥せっていながら、三成の頼みを聞いて本願寺へ一筆したためるシーンが、何よりも豊臣政権の崩壊の前兆を思わせるように演出されていたように思います。
短いシーンだったのですが、印象的でした。
三成とその妻うた
こんなことあって良いのか! と三成に詰め寄る源二郎。
何も答えない三成。源二郎は怒りのまま退室しますが、三成の妻であるうたから、旦那様は今宵はいくら飲んでも酔えないと言っていたと伝えられ、三成をあまり責めないでくれと言われます。
あまりうたに関する記録は残っていないようですが、三成の妻ということで江戸時代に伝えられることが憚られてしまい、結果記録は残らなかったのではないかな……とも思えます。
ブラウザゲーム戦国IXAでは現在シークレットカードとして皎月院(うた)が排出されていますね。獲得できる気は全くしないわけですが……。
今週の おねがい秀次様
先週は三成への書状を書いて貰った源二郎ときり。
今週はとうとう秀吉を諫めてくれというお願い。
一度は断りながらもきりのためにとやってくれる秀次様は予想通り秀吉に怒鳴られてしまうことに。
人の良さが出るだけに、なんかほんと可哀想。
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本作の音楽、結構好きです。オープニング曲はそのドラマを端的に表現しますが、最後は悲願成就ならずに散っていく真田信繁、そして昌幸親子が迎える運命の不安さや、真田家が荒波に揉まれていく様子、それでいて力強く真っ直ぐである様が表現されていると思います。
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