2017/01/09
あらまあ、甘いタイトル
恋路……まったくもって今風な言葉では無いですが、なかなか甘い言葉ではないでしょうか。
大河を週に一度の楽しみにしている既婚のおっさんやおばちゃんの皆様、こんな言葉があったこと覚えていますか?
冒頭から読者を減らすスタイルで19話の感想を綴っていきたいと思います。
もう21話放映後だぞ? というツッコミはご容赦を。(*´ρ`*)
秀吉と茶々 の恋
秀吉に側室になることを求められている茶々。
これまで返答を保留してきましたが、その理由はどの辺にあるのでしょうか。
- 理由無く、生理的に秀吉が嫌い
- 秀吉を嫌いな理由がある
- 他に好きな人がいる
- もっと遊んでいたい年頃
さて、上記のような理由を考えてみても、これだというものがあまりありません。
生理的に嫌い、という素振りは見せていません。一緒に笑顔でトランプ遊びなどをしつつ、裏で秀吉を毛嫌いするようなことを言っているわけでも無いです。例えば同じ三谷作品でいうと、清須会議でのお市の方は、勝家を生理的に毛嫌いしている描かれ方でしたが、本作の茶々はそうではありません。
二番目の理由は色々と思い当たる部分はあります。武具倉庫の中で信繁に、秀吉によって親兄弟が殺されていった様子を淡々としゃべりますが、どこか遠くのことのような口ぶりです。以前、茶々は壊れてしまっているという話になりましたが、その側面がここでも出ています。けれど、壊れてしまっているということは、親兄弟の仇と秀吉を憎み、側室になるなどありえないという強い気持ちに繋がったりしません。そういう想いに至るのはあるいみ当然で、それでは壊れてるとは言えないからです。大蔵卿なんかはまだこの辺の気持ちが強そうな感じがします。
三番目の理由と四番目の理由は重なる部分もあり、例えば権左であるとか信繁であるとかに対しての茶々の態度から読み取れなくもない部分ですが、その割に淡泊であっさりしており、もっと遊びたいからと積極的になっているほどには見受けられません。
これらの理由のどれかに茶々の真意を見つけるのは難しい気はしますが、なんとなくこれら全てがちょっとずつなんとなく入っていて、本当になんとなく受け容れることができないでいた、ということだと思います。
結局受け容れることになるのも、それほど強く断る理由がない事に気付いたことと、もちろん本人が述べているように、秀吉の必死さにうたれたからだと思います。
ある意味秀吉のすごいところではあるのですが、茶々というひとりの若い女性から見て、秀吉は権力のある無しに関わらず、一番自分に対して必死に好意を訴えてきた男性に思えたのでしょう。他の男からしてみれば、秀吉が狙ってる女には手が出せねーよ、という前提の崩壊があるのですが、そういった事情を茶々は理解しつつ、それでも秀吉以上に自分に対して必死な男がいなかった、というのは大きそうです。
人間は夢を見せてくれる人間に惹かれるのも道理な気がします。
側室になる話を受け容れたのは、こういった複雑な感情や事情が相まった上での決断だったのだろうと思いますが、その雰囲気が作中でよく描かれていると思いました。
本作の茶々はほんと壊れているなーと、感心するところであります。
浅井長政の娘として、織田軍の攻撃により落城。
柴田勝家の養女として、秀吉軍の攻撃により落城。
豊臣秀頼生母として、家康軍の攻撃により落城。
戦国時代には戦に巻き込まれて多くの女性たちも大変だったのは容易に想像つきますが、その中でも茶々の落城履歴は群を抜いています。関係者がビッグネームばかりですし、なんというか、大変な人生でしたねほんと。
果たして日本一幸せだったと言えたのでしょうか。
信幸と稲姫 の縁
家康が真田の内情を探るために、嫁を送り込む作戦。
忠勝に対して、娘をくれ、折れてくれ、と。
真田に対しても、HAHAHA! 離縁すりゃいーじゃん! と。
当事者が納得せぬままに、上からガツーンと決められて事が進んでいく典型的なザ・政略結婚。この場合、政略離婚まで付随してしまったわけですが。
それにしても本多忠勝役の 藤岡弘、 さんが家康に話をきかされた時に、スッと流す涙はまさに鬼の目にも涙という感じでやるじゃん、と思いました。
そしてまだ事情を知る前の信幸、立ちションしてたら後ろに仏頂面の忠勝が立ってたらビビルよ! けど、案外そうでもない風なところに信幸の肝の図太さも描かれていたりして。
この件でも一番ひどいのは昌幸で、「わしは断ろうと思ったが信幸がぜひにというから」なんてサラッと言ってしまうあたりむごいw
この二人に関しては、ドラマ後半に大きな軸になっていきますね。
犬伏の別れ然り。
信幸とこう の忠義
こうという女性がもともとつかみ所の無いコメディ要員として描かれてきてはいるのですが、こういうシリアスな時にも泣いて笑って深刻にならないようにするための布石、でもあったわけですね。
しかしドラマとしてはそれでいいのですが、歴史物としてそれで済ませちゃうのも物足りないところ。ここで良いのが彼女が昌幸の死んだ兄の娘で信幸の従姉妹であるということです。
つまり、真田一門の人間なんですね。
なので「真田のため」という旗印に対して嫁としてではなく一人の真田の人間として乗っかれる(乗っからざるを得ない)ということになるんですね。
さてどうなるかこの二人。
きりと信繁 の馴染
信繁と茶々が本気じゃないのは理解しつつ、身分が高くて美人の女性と一緒にいるのがどうしても気になる。幼馴染みに嫉妬してしまうきり。
なんというか、信繁が作中対等にしている唯一の存在ですね。
目上の存在か部下ばかりで、亡き妻であるはなに対しても対等の接し方ではありませんでした。
はなに対しては、もともと身分の低い妻を対等に扱っているのだ……と内外に見せるようにしていたので、これは自然と対等に言い合ったりできる仲、とは違います。もちろんそこには、互いに尊敬しあうからことの心もあったのですが。
しかしきりは徹頭徹尾対等です。きりの方が遠慮しないから、なのですが。
同世代の男友達が作中まったく描かれていない信繁にとっては、きりがその役目を担っています。そこに女性特有のことや色恋が混ざってしまうので、きりというキャラクターが単純に受け容れやすいものになってないんですよね。
多分、信繁に子どもの頃からずっと一緒でため口で話せる親友キャラがいて、きりからその役割が差し引かれたものになったら、もっとストレートに男受けするようになると思うのですが、尺の問題やそんな判りやすいキャラは書かねーぞ、という脚本家の想いでこんな風になってるのでしょう。
まあ、なんか一周回って微笑ましい二人って感じになるんですかね、多分。
秀吉と寧 の仲
秀吉を主人公にした作品では、もう少し寧に気を遣った脚本になりがちなんですが、戦国時代後半の秀吉死後の大阪城がメインステージの本作においては、茶々に苦しむ寧の姿がより際立ちますし、恐らく際立たせています。
秀吉の寧に対する無神経さ……ではなくて、甘えですね、これは。
親以上に寧に対して甘えがあって、彼女の膝枕で他の女性に対する恋の相談をするという無神経さ……ではなくて甘え。
寧に茶々の落とし方を相談する秀吉を、「マジで!?」という目で見るきり。
このきりのカットが、秀吉と寧の関係の三回くらい捻られてこんがらがってしまった奇異な様子を、改めて印象づける役目を負っています。
第三者のこの「マジで!?」というツッコミがないと、異常性が際立たないですからね。
お笑いのボケに対するツッコミとまったく同様で。
寧は気の毒なのは確かだけど、こういう人だからこそ慕われたりして豊臣の滅亡とは運命を共にせずにすんだ、とも言えます。共にしたかったかどうか、は別として。
茶々と信繁 の関係
別に好き合っているわけでもない、なんとなく好みの顔の信繁にちょっかいをかけて楽しんでいる茶々と、たまに命の危険をともなうちょっかいに冷や汗を流しつつ、美人のお姫さまにそういう扱いを受けるのがまんざらでもないドMの信繁、というなんともな関係の二人です。
しかし茶々の「あなたと同じ日に死ぬと思う」という趣旨の発言はあからさまにフィクションくさい発言ではあるものの、先を知らないドラマとして見ていた場合にはとても良いフックになるセリフなので、見る側もそのようにして作品を楽しめると面白いですね。
こういうところがなんとも三谷らしいというか、是非の別れるところだなーと思います。
このメタな楽しみ方ができるかどうかが、まさに是非の分かれ目といったところでしょう。
しかし平野は「源二郎が茶々様を蔵に連れ込んだらしい」という噂話を事もあろうに加藤清正に対して言ってるあたりほんと酷いw
権左もこの調子で清正の耳に入れて、Go to 井戸だったんだろうなと想像させられます。
そしてその後信繁に「しかし、そりゃあ災難だったなー」とか言っちゃうしw
ピタゴラスイッチの入力スイッチとしての役目はバッチリ。
茶々に花を渡されて、一回は断りながら清正が見ていることに気付くと逆に受け取り髪に飾っちゃうあたりの反骨精神はさすが真田の男という感じで、あの清正に対して全く引かないところは好きです。こういうのって、清正から見ると逆にポイント上がるんじゃないかなあ、あいつは嫌なヤツだが骨はある、みたいな。
筆者の完全に個人的な話なのですが、茶々役の竹内結子さんは演技は天真爛漫なのですが女優としてというか人間としての彼女は、もっと大人っぽさが先行している感じがしていてそれがやはりにじみ出ていると感じます。
茶々の配役としてそれほど素直な印象を受けません。
しかし、秀吉が死んで秀頼の生母として大阪城に構える淀殿として、と考えると……こっちはしっくりくる気がしました。
秀吉存命中の若い茶々としてよりも、やはり大阪の陣というクライマックスに映える配役なのだということを改めて感じるところです。
その他
個人的な見所ですが。
暗愚として描かれやすい秀次が空気は読めないけど悪いやつじゃない感じに描かれていて、ファンは増えそう。
それだけに切ない。
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本作の音楽、結構好きです。オープニング曲はそのドラマを端的に表現しますが、最後は悲願成就ならずに散っていく真田信繁、そして昌幸親子が迎える運命の不安さや、真田家が荒波に揉まれていく様子、それでいて力強く真っ直ぐである様が表現されていると思います。
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